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不祥事会見における失言リスク~冷静さを保つために~

2025年05月23日

読了時間目安: 4分


不祥事会見は異様な緊張とプレッシャーの中で行われ、失言リスクが高まります。本コラムでは、記者からの厳しい質問、感情を揺さぶる質問に対しどのように冷静さを保つか、具体的な対策を解説します。

質問のプロとの対峙

第三者の視点で会見を見ていると、「なぜこのような発言をするのだろう」と疑問に思うことがしばしばあります。しかし実際に体験してみると、会見場というのは実に「異様な空間」です。

多くの記者が集まり、一斉にカメラが向けられます。会見に出席する社長や経営層は、謝罪から始まるこのストレスフルな会見に、とても万全とはいいがたいメンタルで挑むことになります。更に会場には「質問のプロ」の記者が待ち構え、連携して同じ質問を繰り返し、矛盾を引き出そうとします。

この状況下で、誠実な回答と真摯な対応をし続けることは、非常に難しいと言わざるを得ません。

感情を揺さぶろうとする記者との攻防

不祥事会見では、平時から企業に取材をしている経済部の記者と、社会部の記者の両方が取材に来ます。そこに、TVのワイドショーのレポーターが加わることもあります。

平時から企業に取材をしている経済部の記者は、ある程度会社や製品に関する情報や知識を持っており、「厳しさはありつつも冷静な質問」を行うことが多いです。しかし社会部の記者は「弱者の立場」に立った厳しい質問を投げかける傾向があります。「被害者を出す企業の問題点をあぶり出し、世間に問題を問う」という使命があるためです。

とはいえ、記者の怒号が飛び交った昔の会見と比較すると、ここ数年の会見は幾分か冷静なトーンで行われるようになりました。これは、会見がネット配信されるようになり、記者の所属や質問内容がネット上で批判とともに拡散する可能性があり、記者の抑止力になっているためだと考えられます。

それでも「口調がきつい質問」や「記者の意見(自説)」を述べての執拗な追求は引き続き見られます。これは、会見者の感情を揺さぶることで「失言を引き出す」「本音を語らせる」という方法をとっているためです。このような環境に不慣れな社長や経営者は、会見で不適切発言をしてしまいがちです。

メディアトレーニングで危機に備える

人間はだれしも防衛本能があります。危機的状況においてはfight-or-flight(闘争か逃走か)の選択をしますが、不祥事会見での「逃走」の選択肢はなく、「闘争」も悪手です。そのため、会見ではひたすら冷静さを保つことが必須です。記者からの鋭い質問を浴びせられ、カメラは常に撮影されている状況下、自身の発言は「一字一句」注目を浴びる。このプレッシャーは尋常ではありません。

こうしたプレッシャーへの備えとして有効なのが「メディアトレーニング」です。このトレーニングでは「模擬危機管理会見」を通じて実際の危機を想定した練習を行います。実際にカメラを回し、回答内容や所作、態度を振り返りながら、どのように回答すればよいかを学ぶことができます。

これは「最も無駄になって欲しいトレーニング」の一つですが、ぶっつけ本番で会見に挑むと、百戦錬磨の記者の鋭い質問に対して「不適切発言」をしてしまうリスクが高まります。初めてトレーニングを受ける方は、「ボロボロの模擬会見」になるケースが多いですが、逆にその段階で「失敗」することで、「不祥事を起こしてはならない」「万が一の場合を想定して準備をする」ことの重要性に気づくことができます。

「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、危機管理には準備が大切であり、防火措置が必要です。防火措置として、メディアトレーニングの平時の実施をお勧めします。