誹謗中傷

誹謗中傷の意味、どこからが誹謗中傷なのかを解説

2023年04月04日

読了時間目安: 7分


「誹謗中傷の意味は?」や「どこからが誹謗中傷になるの?」と考えたことがある人は多いのではないでしょうか。
また「誹謗中傷と批判はどう違うの?」さらには「誹謗中傷の代表例はどんなもの?」と疑問に思ったことはありませんか?
インターネットが発展し、誰もがSNSを使う現代において誹謗中傷はとても身近な問題になっており、個人や企業を問わず誹謗中傷の被害者または加害者になる可能性がある時代です。
この記事では「誹謗中傷の意味」をはじめ、誹謗中傷の原因、誹謗中傷の代表例などについて簡単に解説します。

誹謗中傷の意味

誹謗中傷の意味は、特定の人物(組織も含む)に対して、侮辱や嫌がらせ、デマ情報、嘘などを使って、相手の名誉や人格を傷つける一連の行為のことです。 誹謗中傷は特定の人に直接なされる場合もありますが、昨今ではインターネット上において、SNSやネット掲示板を使い、間接的に行われることが主流になっています。 誹謗中傷の被害を受ける対象は個人に限らず法人も含まれます。また、著名人や一般人も関係なく、誰でも被害を受ける可能性があります。また、悪意がなくとも誹謗中傷に該当する発言や投稿をしてしまうケースもあり、誹謗中傷はすべての人に起こり得る問題とされています。 事実、誹謗中傷が原因となり、ネット炎上が起きたり、訴訟に発展するケースもあるため、個人や法人を問わず正しい知識を持っていなければいけません。 とりわけ、SNSをはじめとするインターネットを利用する人や企業にとっては、誹謗中傷の意味を理解すると同時に、とても身近な問題であることを認識する必要性が求められています。 ちなみに、誹謗中傷は「誹謗」と「中傷」の異なる言葉を合わせたもので、誹謗と中傷には意味の違いがありますので、次で詳しく解説します。

【誹謗と中傷の違い】

誹謗中傷の意味を理解するうえで、誹謗と中傷の違いを知っておきましょう。 誹謗:相手の悪口を言うこと 中傷:根拠がないことで、相手の名誉を傷つけること このように、誹謗は「相手の悪口」であるのに対し、中傷は「根拠がないことで相手を悪く言う」といった違いがあります。 具体的には、相手に対しブスやデブといった悪口を言うことは「誹謗」になり、事実ではないにもかかわらず、浮気している!や詐欺師だ!と言うことは「中傷」に当てはまります。 いずれにも共通していることが「相手の名誉を侵害すること」であり、法律上は名誉権の侵害に該当する可能性があります。

【誹謗中傷と批判の違い】

誹謗中傷の意味を知るうえでは、誹謗中傷と批判の違いについても理解しておかなければいけません。 誹謗中傷:相手の人格や外見に対する悪口、虚偽の発言をすること 批判:相手の行動や意見に対して、異なった意見を主張すること 誹謗中傷は「悪口や虚偽の発言」であるのに対して、批判は「異なる意見を主張する」といった違いがあります。 例えば、特定の人物の発言や行動に対して「その意見にはこのような問題がある」や「こうするべきだ」という内容の発言は、誹謗中傷ではなく批判に該当します。 このように、誹謗中傷と批判は紙一重のような違いがあるものの、誹謗中傷は「悪意の有無」や「虚偽の有無」といった点で区分されることがほとんどです。 一方で、悪意がない批判のつもりであっても、相手からすれば誹謗中傷と受け取られる可能性もあり、誹謗中傷と批判の明確な線引きは難しいとされています。

どこからが誹謗中傷に該当するのか

誹謗中傷の意味を理解する際に「どこからが誹謗中傷で、どこからが誹謗中傷ではないのか」という基準についても把握しておく必要があります。 どこからが誹謗中傷になるのかという点においては「根拠を伴わない悪口や文句、嘘、噂によって相手を傷つけた場合」ということが目安になります。 具体的には、以下のようなケースが誹謗中傷に該当する可能性があります。 SNS上に「Aさんは不倫をしている」という嘘の投稿をした
  • ネット掲示板に「Bさんは浮気を繰り返す最低な人だ」という悪口を投稿した
  • 口コミサイト上に「C店の料理はいつもカビが混入しているので行かない方がいい」というデマを投稿した
  いずれも、特定の人や店を対象にし「根拠がない嘘や悪口」であることが分かると思います。このようなケースは誹謗中傷に該当します。 対照的に、特定の人や団体を指していない場合や、虚偽ではない発言は誹謗中傷に当てはまりにくいとされています。 どこからが誹謗中傷に該当するかは、その線引きが難しいとされていますが「根拠がない悪口や文句によって相手を傷つけた」というポイントが争点になると考えてよいでしょう。

誹謗中傷の法律上の影響

誹謗中傷の意味を知るうえで、誹謗中傷によって生じる法律上の影響も把握することが大切です。最も重要なポイントとして以下が挙げられます。
  • ・名誉毀損罪
  • ・侮辱罪
上記2つについて解説します。

【名誉毀損罪】

誹謗中傷は「名誉毀損罪」に抵触する可能性があります。名誉毀損罪とは、公然と事実(真偽は問わない)を摘示し、相手の名誉を毀損する罪のことです。 分かりやすく言うと、不特定多数の人に対し具体的な内容を示したうえで、相手の社会的評価を貶めるような言動が該当します。 具体的には、インターネットや書籍や新聞、週刊誌等で、特定の人や組織の社会的評価を下げるような投稿をした場合、名誉毀損罪に問われる可能性があります。 仮に「伏せ字」を用いたとしても、容易に特定できるようなものであれば、名誉毀損罪に当たるかもしれません。 ポイントは「公然であること」、「事実(真偽は問わない)を摘示していること(特定の者の名誉が害される程度に具体的)」そして「人の名誉を毀損すること」の3つとされています。

【侮辱罪】

誹謗中傷は「侮辱罪」になることもあります。侮辱罪とは、公然と事実を摘示しないで相手を侮辱する罪のことです。 具体的には、SNS上で「Aさんはバカだ」と投稿すると、事実を摘示していないものの、特定の人を公然と侮辱しているため、侮辱罪に接触する可能性があります。 誹謗(相手の悪口を言うこと)が侮辱罪になることが多く、名誉毀損罪よりも身近に起こりやすい罪と言えるかもしれません。

誹謗中傷の増加の原因

誹謗中傷の意味を理解するうえで、その「原因」についても知っておきましょう。誹謗中傷が起きる原因には以下のようなものがあります。  
  • ・SNSの手軽さ
  • ・SNSの匿名性の高さ
上記についてそれぞれ解説します。

【SNSの手軽さ】

誹謗中傷の原因として挙げられるのが「SNSの手軽さ」です。昨今、様々な情報がSNS上で取り扱われるようになりました。 手軽に利用できるツイッターをはじめとするSNSでは、インターネット上で「ネット炎上」などが起きると、不特定多数の人が集まり「他の人も言っているから」という集団心理が生まれやすくなります。 多くの人が集まり意見が二極化することで発言がエスカレートしたり、特定の意見に過度に共感することで誹謗中傷が起こりやすくなるのです。 事実、総務省が公表したデータによると、インターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件の数は増加傾向にあります。 さらに、相談対応の内訳として「プライバシー侵害(住所・電話番号等)」に次いで「名誉毀損・信用毀損」が多く、インターネット社会における誹謗中傷問題は高止まりしています。 参考:SNS上での誹謗中傷への対策に関する取組の大枠について 誹謗中傷が起きる2つ目の原因が「SNSの存在」です。ツイッターやインスタグラムといったSNSでは投稿内容に対するコメントがしやすい反面、誹謗中傷も起こりやすくなります。 とりわけSNSを利用する時間が多い若者層においては、誹謗中傷に対する知識やリスク管理が乏しいことから、誹謗中傷は常態化しやすいと言えます。

【SNSの匿名性の高さ】

誹謗中傷が起こる原因には「匿名性が高い」ことも挙げられます。ほとんどのSNSは匿名での投稿ができるようになっており、実名では言えないようなことを言ってしまうこともあります。 匿名であることを理由に「バレないだろう」といった心理が働き、自覚が乏しいまま誹謗中傷をしてしまうケースもあります。

誹謗中傷の代表例

誹謗中傷の意味を理解するためには、実際に起きた誹謗中傷の代表例を参考にしてみてください。

【事件と無関係な人物への誹謗中傷】

2019年8月、茨城県の常磐自動車道で起きたあおり運転事件では、暴行を加えた男性の車に同乗していた女性と容姿が似ているという理由で、事件とはまったく関係がない女性が特定され「早く自首して」といった内容の誹謗中傷が起こりました。 関係がなかった女性の実名を含んだ情報は、SNSを中心に拡散され、ネット炎上にまで発展し、女性には日常生活において様々な支障が生じていました。 女性は実名等が表示された動画を投稿した男性を名誉毀損で訴え、裁判所は悪質な誹謗中傷として、男性に33万円の支払いを命じています。

【テレビ出演者に対する誹謗中傷】

2020年5月、人気テレビ番組に出演していた女性プロレスラーが、番組内での言動について誹謗中傷を受け、自殺に追い込まれる事件が起こりました。 女性のSNSアカウントには「早く消えて」や「吐き気がする」といった内容のコメントが殺到し、精神的に追い詰められた女性が命を絶つ最悪の結果になってしまいました。 女性を誹謗中傷した男性は侮辱罪で略式起訴され、科料9,000円の略式命令を受けています。

【デマによる誹謗中傷】

お笑いタレントA氏が過去に起きた殺人事件に関与していたというデマが拡散され「自白して楽になれ」や「人殺しは死ね」といった誹謗中傷がネット掲示板を中心に起こりました。 誹謗中傷は10年近く続き、A氏が警察に相談してから、警察が捜査に着手するまで9年の時間を要したと問題になっています。 この結果、誹謗中傷をした19名が名誉毀損罪または脅迫罪などで書類送検されています。(全員不起訴)

まとめ

誹謗中傷の意味は言葉だけを理解するのではなく、その影響やどこからが誹謗中傷に該当するのかも知っておく必要があります。 誹謗中傷の代表例なども参考に正しい知識を身に付けるようにしましょう。