炎上騒動・ステマ関連
内部告発による炎上リスクについて解説
2023年04月20日
読了時間目安: 7分
「内部告発によるリスク対策は何をすればいいのか?」や「内部告発リスクはどんな影響があるのか?」と考えた企業担当者は多いのではないでしょうか。内部告発は企業をはじめとする組織の不正などを内部関係者が告発することですが、内部告発する側、そして内部告発される側いずれにもリスクが生じます。この記事では、内部告発のリスクにはどのようなことがあるのかをはじめ、炎上につながった内部告発の事例などについてわかりやすく解説します。
目次
内部告発とは
内部告発とは、組織内部で存在している不正や違法行為を、組織内部の関係者が告発することです。
その多くは、企業内で行われている不正行為について、従業員が上層部やコンプライアンス部門、さらには行政機関やマスコミといった外部機関に告発するパターンです。
昨今では、企業内の不正や違法行為をツイッターをはじめとするSNSに投稿するパターンが主流になりつつあります。
他にも、インターネット上のブログで記事化したり、掲示板サイトに書き込んだりするパターンもあり、内部告発の場所がインターネットに移行してきたと言えます。
内部告発の場がインターネットに移行してからは、不特定多数の人に企業内の問題行為が知られるようになり、内容の真偽を問わず「炎上」してしまうこともあります。
とりわけ、内部告発される側の組織としては「内部告発が原因の炎上リスク」に備える必要が求められています。
内部告発は、これまで「組織内の問題」として対応されてきたことでしたが、昨今では社会問題にまで発展する炎上リスクを含むことから「リスク管理の問題」としても向き合う必要が生じています。
公益通報者保護法とは
内部告発のリスク管理において「公益通報者保護法(2022年6月改正)」を理解しておく必要があります。
公益通報者保護法とは、内部告発した人を守るための法律のことで、具体的には以下のような保護を定めています。
- 解雇が無効になる
- 告発者に対する損害賠償請求の禁止
- 配転や降格といった「報復人事」による不利益を受けない
- 内部告発を理由にした派遣契約の解除を受けない
内部告発を受けた側のリスク
内部告発を受けた側(企業や組織)のリスクには主に以下のようなことがあります。
- 炎上リスク
- 訴訟リスク
- 信頼失墜リスク
【炎上リスク】
内部告発リスクの代表的なものとして「炎上リスク」があります。具体的には、SNS投稿をきっかけにしてインターネット上で炎上するネット炎上です。
テレビなどのマスコミがネット炎上を取り上げることで社会問題にまで発展する可能性もあり、企業や組織としては炎上対策を講じる必要があります。
【訴訟リスク】
内部告発リスクには「訴訟リスク」もあります。仮に、告発者が冷遇されるような状況になった場合や、公益通報者保護法に反する対応を取った場合、訴訟問題に発展する可能性があります。
訴訟にまで発展すると「大きな問題」として報道が過熱し、企業や組織は対応に追われるかもしれません。
【信頼失墜リスク】
内部告発リスクは「信頼失墜リスク」も含んでいます。内部告発が炎上や訴訟にまで及ぶと、関連企業や顧客、さらには従業員からの信頼を失う可能性が否定できず、企業にとって業績悪化につながるリスクがあります。
内部告発する側のリスク
内部告発する側(告発者)のリスクは以下のようなことがあります。
- 解雇リスク
- 報復人事
- 組織内での人間関係悪化
【解雇リスク】
内部告発すると「解雇リスク」に直面するかもしれません。公益通報者保護法によって解雇は無効とされていますが、あくまでも法律上の話であり、現実とは乖離しているのが実情です。
人員削減などの名目で「実質的な解雇」になる可能性もあり、告発者にとって最も大きなリスクと言えるでしょう。
【報復人事】
内部告発することで「報復人事」を受けるリスクも忘れてはいけません。人員整理や部署再編といった名目で、希望とは異なる部署へ移動されたり、外部との接触が少ない部署へ移動させられることもあります。
【組織内での人間関係悪化】
内部告発が炎上につながるケース
内部告発のリスクに備えるためには「内部告発が炎上につながるケース」を理解しなければいけません。
【SNS投稿】
内部告発リスクとしても最も警戒しなければいけないことが「SNS投稿」です。具体的には、内部関係者がツイッターやインスタグラム等に不正行為などを投稿するパターンが挙げられます。
SNS投稿の場合、投稿した本人が内部告発の意図がなくても、不特定多数の人に内部告発として捉えられてしまい、急速に拡散されてしまう可能性があることに注意しなければいけません。
また、SNS投稿は該当投稿を削除したとしても、まとめサイトや投稿を拡散した人たちによるスクリーンショットなどが残りやすいため、企業側としては中長期的な打撃を受ける可能性があります。
昨今ではSNS投稿をきっかけにして炎上するケースが多く、内部告発リスクとしての備えが欠かせない分野と言えるでしょう。
【ブログ投稿】
内部告発リスクには、告発者による「ブログ投稿」が炎上につながるケースもあります。SNS投稿同様に不特定多数の人に向けた発信ですが、実質的には文字数制限がないため、より詳細な事態が公になるリスクがあります。
【ネット掲示板】
内部告発リスクとして「ネット掲示板」から始まる炎上も忘れてはいけません。SNSと同じような感覚で企業の不正が投稿され、投稿内容に尾ひれが付くようにして炎上する可能性があります。
企業としては、ネット掲示板の投稿を監視するには時間も労力も要するため、SNS投稿の監視以上に大変かもしれません。
内部告発から炎上につながった事例
内部告発が炎上につながった事例について紹介します。
内部告発に対して真摯に対応しなかった事例
2007年、某企業に勤務していたH氏は、当時の上司が業界から問題視されるような不当な引き抜きを行っていることを内部告発しました。
しかし、上司からは叱責され、不当な人事評価、不当な部署移動や無意味な作業を命じられるなど報復人事や冷遇を受ける結果になりました。
さらに、告発先である同社のコンプライアンス室は、同氏が特定できる内容のメールをその上司にまで送りつけるなど杜撰な対応をとっていたことが判明、後に裁判にまで発展し、社会問題として取り上げられました。(8年後に和解成立し、同氏は2021年に退職するまで同社に勤務し続けた)
この一件は、企業がコンプライアンス遵守をうたっておきながら、同氏を執拗に冷遇する対応をとったこと、さらにその上司は執行役員を務めるまで昇進していたことなど、企業体質を問われるかたちで炎上しています。
内部告発とSNS投稿による拡散の事例
2018年、某企業は胆振東部地震による大規模停電によって食品廃棄が余儀なくされたとし、電力会社に対し9億6,000万円の損害賠償を請求する方針であると、新聞によって報じられました。
この一件が報道された後、同社に勤務している人物がツイッター上に「食品廃棄は停電のせいではなく、上層部の見通しが甘かった」と指摘する内容を、拡散を求める文言と一緒に投稿をしました。
間もなく投稿は削除されたものの、まとめサイトやスクリーンショットなどで拡散が続いた結果、同社に対する批判が殺到し、炎上しています。
同社は「電力会社に対して法的措置をとるつもりはない」と発表したものの、世論(炎上)を受けて対応を変えたとして、さらなる炎上を招いてしまいました。
この一件は、内部告発に対する備えの甘さだけでなく、SNS投稿によって炎上が引き起こされた事例として知られています。
内部告発による炎上リスク回避方法
内部告発による炎上リスクを回避するための方法は以下の通りです。
- SNS投稿の監視
- 就業規則の見直し
- 従業員の教育
【SNS投稿の監視】
内部告発リスクに対応するためには「SNS投稿の監視」が欠かせません。昨今の内部告発はSNS投稿がきっかけになっていることが多く、投稿が拡散する前に対応することが重要です。
内部告発リスクに備えて、可能な限り早期に炎上要因に対応できる体制構築が求められます。
【就業規則や対応マニュアルの見直し】
内部告発リスクに対応するためには「就業規則や対応マニュアルの見直し」も必要です。具体的には、従業員やアルバイトに対し、不用意なSNS投稿や誤解を生むような投稿はさせない仕組みを盛り込む必要があります。
また、炎上が起きた際の初期対応や責任者の選定をあらかじめ決めておくようにしましょう。
【従業員の教育】
内部告発リスクに備えて「従業員の教育」も徹底しましょう。勉強会やオリエンテーションを通じて、炎上の事例を共有することが重要です。
とりわけ、インターネット世代に該当する新入社員や、リスク管理の意識が低くありがちなアルバイト従業員に対する教育を徹底しましょう。