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危機管理広報視点で分析する「良い謝罪会見」のポイント

2024年04月23日

読了時間目安: 4分


企業不祥事や危機発生をきっかけに、企業が謝罪会見を実施することはよくあります。会見実施でさらなる炎上が起こるケースもある一方で、逆に企業イメージの悪化を防ぎ、むしろ「マイナス状態から潮目が変わる」会見もあります。

このような見事な謝罪会見のポイントを、対応した「人」にフォーカスを当て、危機管理広報視点で分析していきます。

「良い謝罪会見」の定義

企業不祥事が発生した以上、事案に対するネガティブな記事が一定数出ることは避けられません。当記事における「良い謝罪会見」とは、記者の質問がエスカレートせず、その結果「マイナスなイメージが低減し、さらなる炎上が起こらない会見」と定義します。 そのために重要となるのは「対応者の受け答えが完璧であること」です。これにより記者がある程度納得し、結果として世間も納得感を持つことにつながります。

事例1:KDDI通信障害会見(2022年7月3日) KDDI 高橋社長

好事例としてよくあげられる会見です。
KDDIは通信障害発生時、HPやau端末に障害情報を掲載するのみに留まり、「障害が発生しているのに状況がわからない」と、店舗に顧客が殺到しました。通信障害の解消が進まなかったこともあり、危機管理広報的には「初動の遅れ」が発生していたと言えます。

会見では、技術畑の社長らしく、技術的な部分を含め高橋社長がほぼひとりで回答されていました。記者からの質問には、よどみなく、クリアで丁寧な対応。障害発生に対する真摯な謝罪がされ、会見を見ていた多くのユーザから、高橋社長への賞賛とKDDIへの応援の声があがりました。

日本企業の社長はゼネラリストやプロ経営者の方が就かれるケースが多く、技術畑出身の方が少なくなった印象です。高橋社長は「技術畑出身の強み」を存分に発揮し回答をされたことが、ネガティブな反応を少なくできた要因です。

事例2:ダイハツ不正認証記者会見(2023年12月20日)トヨタ自動車 中嶋副社長

ダイハツ・トヨタの記者会見はタイミングとしては「完璧」でした。第三者委員会の会見の後、即座に謝罪会見を実施しています。

トヨタ自動車・中嶋副社長は「親会社」としての立場で会見に臨んでいますが、立場的に「親会社」だとしてもダイハツは別会社です。「優越的地位の濫用」と受け取られないよう発言に注意しなければならず、されど「親会社の責任」も果たさなければいけない難しい立場でした。

記者からの質問へはダイハツ・奥平社長(当時)が主に回答されていましたが、司会者が「適切に」トヨタ自動車・中嶋副社長にも回答を求めていました。中嶋副社長は最初に必ず「お詫び」の言葉から発言をスタートさせ、お客様視点で話されていました。 中嶋副社長は相当なメディアトレーニングをされたものと推察されます。

「良い謝罪会見」にするためのポイントのまとめ

ここまで、高橋社長、中嶋副社長という「人」にフォーカスをしましたが、今回取り上げた2つの会見に関するその他のポイントを以下に記載します。

・記者からの質問で「わからない」部分ははっきり「わからない」とし、後日調べてすぐ開示する。(KDDI /ダイハツ)
・「データ」「図」などを用いて、技術になじみがない記者に「理解をしてもらう」努力をしている。記者の先にいる顧客を意識している。(KDDI)
・最初に社長が質問を受け、技術や数字などの詳細を担当役員に振る。社長が「逃げない」姿勢を見せる。(KDDI)
・司会者による回答者の選定が適切。(ダイハツ)
・第三者委員会を全面的に受け入れ、「問題(課題)」と「改善」をベースに話をする。(ダイハツ)

危機発生時の謝罪会見は企業側の出席者にとって非常に厳しい環境ですが、逃げずに真摯に対応することが成功のカギになります。