広報の本質とは~危機発生時にこそ試される企業の広報力~
2024年11月06日
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1. 広報は広告にあらず
まず大前提として「広報は広告ではない」ということを理解しなければなりません。経営者の中には「販売促進のコストを抑えるために広報に力を入れている」という方もいますが、これは広報の一側面に過ぎません。
記者の視点では、企業をメディアに取り上げるにあたり、以下のポイントが重要視されます。
- ① 読者ニーズに合致していること:記事が読者の求める内容であるか。
- ② 報道価値があること:社会状況や季節要因に合致しており報じる価値があるか。
- ③ 社会的な問いかけがあること:問題提起として社会に何かを問える内容か。
記者は、広告のような販促記事を書きたいわけではありません。そのため、広報担当はこれらのポイントを満たすよう、商品やサービスを記者に訴求しなければなりません。よほど革新的な新製品やサービスでない限り、全面的に称賛される記事にはならないのが通常です。もし広報が無理に売り込みを試みるなら、「広告出稿しろ」と突き返される可能性が高いのです。
販促「だけ」に広報を使う企業は危ない
自社製品やサービスのメディアへの売り込みは、ポジティブで楽しい活動です。しかし、企業はいつも順調とは限らず、リコールや重大なトラブルなどが発生する可能性は常に存在しています。このような「マイナスシナリオ」を想定していないと、もしもの時に後手に回ってしまうことになります。
重大な問題が発生した際には、それまで良好な関係を築いていた記者であっても、被害拡大防止のための社会的責任を果たすため、厳しい報道を行います。当然、記者から企業への問い合わせ内容も厳しいものになります。そのような状況下で「冷静に状況を把握し、適切な危機管理広報対応を行う」ことが広報として必要なスキルです。
ポジティブな販促広報だけを目的とした広報活動をしている企業は、「リスクを抱えた広報活動をしている」と言えるのです。
広報がいない企業の脆弱性
企業によっては、広報担当がいない場合があります。しかし、メディアから見ると「広報がいない企業は玄関がない家のようなもの」です。
記者は、問い合わせ窓口がないために、企業内外の多方面から情報収集せざるを得ません。結果として、企業は情報統制がとれず、メディアは断片的な情報を基に報道を行うことになり、多様な解釈も生まれやすくなります。
広報担当者がいることで、メディアはもし事前に多方面に取材をしていたとしても、しかるべきタイミングで広報担当者にコンタクトをしてきます。その際に適切な対応をとることは、危機発生時の重要な初動対応のうちの一つと言えます。
危機発生時にこそ試される広報の能力と胆力
危機発生時は、広報が「ゲートキーパー」としての責任を担います。この時、メディアからの厳しい質問に対応しなければならず、また情報が十分でないために回答できないこともあります。時に挑発的な質問に直面することもあり、ストレスの多い状況下で冷静に対応するスキルが求められます。
広報担当者は、メディアからの質問を通じて「状況把握」「報道予定内容の確認」「世間の反応の認識」を行い、それらの情報を経営層に伝える役割も担います。その上で、もし「会社として耐えらない」と判断をしたなら、最後の手段として「メディア向けの会見開催」を提案する立場でもあります。
危機管理広報の業務は、メンタル的に大きな負担を受けることもあります。実際に、このような状況でストレスを抱えてしまい、退職するケースも存在します。しかし、「会社と社員を守る」ためにメディアに誠心誠意対応することは広報担当としての矜持であり、企業にとって必要不可欠な業務です。
危機発生時には、企業の中の誰かが適切な対応を行わなければ、企業ブランドが大きく既存する恐れがあります。そしてその役割を果たすのは、日頃からメディアとの関係を築いている、広報担当にほかならないのです。
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