sns 炎上対策

炎上を防ぐ従業員向けSNS研修|研修内容の具体例や実施方法とは?

2025年06月30日


SNSリテラシーの向上は、企業アカウントの運用担当者だけでなく従業員を含む組織全体に求められます。なぜなら、従業員の個人アカウントや裏アカウント(サブアカウント)での不適切な投稿が炎上の火種になることがあるためです。

本コラムでは、炎上リスクを未然に防ぐ手段として有効なSNS研修について解説します。SNS研修にはマーケティングの要素もありますが、今回はリスクマネジメントに重点を置いた研修内容に焦点を当ててご紹介します。

SNS研修の目的・受講対象者

ここでは、SNS研修を実施する目的と研修の受講対象者について解説します。

 

研修の目的と期待される効果

SNS研修の主な目的は、社会人として適切なSNSの使い方を学び、投稿や共有によるリスクを正しく理解することです。

研修を通じて以下のような効果が期待できます。

● 従業員のSNSリテラシーの向上
● 炎上や情報漏えいなどのリスクに対する初動対応の迅速化
● 社内におけるリスクマネジメント体制の強化 など

 

企業の信用は、一つの投稿で大きく揺らぐ時代です。そのため、組織全体でSNSリスクに対する共通認識を持ち防止策を共有しておくことが、信頼の維持や企業価値の保全につながります。

 

研修の受講対象者

SNS研修は原則として全従業員を対象に実施するべきです。誰が情報を発信し、どこで問題が発生するかは予測できないため、職種や雇用形態を問わず教育することが重要です。

特に以下の層には、研修の徹底が求められます。

● 新入社員・若手社員:社会人としてのSNS利用に関する理解が浅く、情報漏洩につながるリスクがあるため
● 管理職・マネージャー:部下のSNS利用への監督責任が問われる立場にあるため
● パートやアルバイト:顧客対応中の言動やSNS投稿が炎上の引き金になるケースもあるため。雇用形態に関係なくリスクを理解することが必要
● 経営層:発言が注目されやすく炎上のリスクが高いため。また、企業姿勢を示す存在として、SNS方針の理解と指示が不可欠

 

また、公式アカウントの運用に関わる広報・マーケティング担当者に対しては、マーケティングSNS研修の一環として、企業アカウント運用時のSNSリスクマネジメントに特化したプログラムを組み込むことも効果的です。

 

SNS教育の重要性

SNSの利用者は年々増加しており、2023年時点で日本国内のソーシャルメディア利用者数は約1億580万人に達しています(※)。中でもX(旧Twitter)は約6,700万人のユーザーを抱え、影響力の大きい媒体として位置づけられています(※)。

一方で、裏アカウント(裏垢・サブ垢 )や鍵付きアカウント(鍵垢)、24時間で消える投稿(ストーリーズなど)は拡散力が過少評価されやすく、油断を招きやすいです。いずれもスクリーンショットなどにより半永久的に記録が残ることで、いわゆる「デジタルタトゥー」化するリスクを含んでいます。個人の投稿が炎上して勤務先が特定されると、企業全体が炎上の渦に巻き込まれる事態へと発展しかねません。

このような背景から、従業員にSNSリスクへの正しい認識を持たせることは、企業にとって不可欠な取り組みといえます。SNS教育の必要性については、下記の記事でも詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

 

▶関連コラム:【人事向け】従業員によるSNS炎上を防ぐ!研修・社内規定の重要性

参考:総務省.「情報通信白書(令和6年)」.https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd217100.html ,(参照2025-06-23).

参考:X.「「X Corp. Japan 株式会社」への社名変更のお知らせ」.https://x.com/XcorpJP/status/1860156376707911858 ,(参照2025-06-23).

SNS研修で取り扱うべきコンテンツの具体例

SNS研修では、従業員が実際に遭遇しやすいトラブルや炎上リスクに焦点を当てた実践的な内容を扱うことが重要です。単なるマナーや使い方の説明にとどまらず、具体的な事例や影響まで踏み込むことで、リスクを「自分ごと」として認識できるようになります。ここでは、研修で扱うべきコンテンツの具体例を4つご紹介します。

 

SNS炎上の危険性や企業への影響

SNS炎上は多くの場合、個人の軽率な投稿や小さな不注意から始まります。しかし、それが他のユーザーの関心を引き、コメントや共有によって拡散されると、やがてニュースサイトなどの目に留まり、マスメディアに報じられる事態へと発展することも少なくありません。場合によっては行政からの調査や指導が行われるケースもあります。

例えば、市職員が何気なく職場内で撮影・投稿した写真に企業の税務情報が映り込んだことで問題視された事例や、従業員の家族が新商品の発表前にタレント名をSNSでうっかり漏らしてしまった事例などが挙げられます。

このような炎上が発生すると、企業のブランドイメージが損なわれるだけでなく、賠償責任が生じたり不買運動が起きたりするなど、経営面にも深刻な悪影響を及ぼしかねません。ささいな不注意が大きな問題になるSNSリスクの深刻さを、全社で認識しておくことが重要です。

 

炎上発生時の対応方法

炎上が起きた際に重要なのは、スピーディかつ適切な対応です。初動を誤ると情報の混乱や批判の拡大を招き、事態が収束するまでに多くの時間を要する恐れがあります。そのため、SNS研修では炎上発生時の対応フローをあらかじめ共有し、組織全体で認識を統一しておくことが大切です。

まずは事実関係を正確に確認し、関係部署や経営層、外部関係者へ迅速に情報を伝える必要があります。その上で、真摯な姿勢での謝罪や説明、必要に応じた再発防止策を提示することが求められます。一度傷ついた信頼を回復するには、継続的かつ丁寧な対応も欠かせないことを全社で理解しましょう。

 

SNS炎上につながりやすいテーマ・実際にあった事例

SNS上で批判を招きやすいテーマはある程度傾向があり、研修でこれらを事前に共有することで従業員のリスク感度を高めることが可能です。

炎上しやすいテーマ例は以下の通りです。

● 災害(地震・感染症など)に対する発言
● 差別的表現(人種・性別・年齢など)
● 政治・宗教・思想に関する投稿
● 誤操作・誤送信・社内情報の漏えい など

 

これらのテーマは、無意識のうちに投稿してしまうケースも少なくありません。例えば米・大手アニメ会社が「なんでもない日おめでとう」とX(旧Twitter)の公式アカウントで投稿。その日は長崎原爆投下の日だったことから、多くの批判が集まってしまったケースがあります。このような実際の炎上事例を交えて、「自分ならどう対応するか」を考えさせることが効果的です。

 

社内SNSガイドラインやポリシーの徹底

SNS研修では、社内で定めたSNSガイドラインやポリシーを周知し、実際の業務や日常でどう活用するべきかを理解してもらうのも有効です。

 

研修ではどのような投稿が問題となるか、企業名を出す際の注意点、発信内容への責任や企業人としての倫理的な配慮について具体的に伝えます。既存のガイドラインに不安がある場合は、見直しを検討するのも良いでしょう。必要に応じて、SNSガイドラインの策定支援サービスなどを活用してください。

 

SNS研修の実施方法

SNS研修を効果的に実施するには、研修の目的や従業員の業務環境に応じた方法を選ぶことが重要です。実施形式によって得られる効果や運用の負荷が異なるため、それぞれの特徴を理解しておく必要があります。ここでは、自社で研修を運営する場合と外部委託する場合の違い、さらに集合研修・オンライン・eラーニングといった実施形態の特徴について詳しく解説します。

 

自社運営と外部委託を比較

SNS研修を自社で運営する方法には、自社の実情に合わせた内容を柔軟に構成できる点が大きなメリットです。自社の組織文化や従業員のリテラシーレベルに応じた内容に調整しやすく、外部委託にかかる費用も抑えられます。ただし、社内にSNSリスクに関する専門知識を持つ人材がいないと、具体的な事例などを交えた研修の設計や実施が難しく、準備や運営にも多くの時間と労力を要する点に注意が必要です。

一方、外部に研修を委託する場合は、最新の炎上事例や業界動向を把握した専門講師による質の高い研修を実現できます。プロが設計したカリキュラムや資料を活用できる点も魅力です。ただし、企業独自の課題に対応したカスタマイズが求められるので、事前に対応可能範囲を確認することが重要です。予算面の負担も考慮する必要があります。

 

集合研修・オンライン・eラーニングを比較

SNS研修の実施形式には、集合研修・オンライン研修・eラーニングの3つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

● 集合研修のメリット:ロールプレイやグループワークを通じて実践的に学べる、受講者同士の交流や相互理解が促進される
● 集合研修のデメリット:受講者のスケジュール調整や会場準備に時間と手間がかかるため、運営側の負担が大きい

● オンライン研修のメリット:場所を選ばず実施できるため遠隔地の従業員も参加しやすい、会場費や交通費がかからずコスト削減につながる
● オンライン研修のデメリット:対面に比べて主体性が育ちにくい、インターネット環境や機材の整備が必要になる

● eラーニングのメリット:時間や場所に縛られずに学習できる、教育内容を標準化できて進捗も一括管理しやすい
● eラーニングのデメリット:受講が一方通行になりやすく学習の定着に工夫が必要、受講率向上のための仕組みが別途必要となる

 

それぞれの特性を理解した上で、従業員の理解促進と定着を意識した運用を心がけることが、研修効果を高める鍵となります。

 

SNS研修を実施する流れ

SNS研修を実施する際の具体的な流れについて、段階的に解説します。

 

SNS研修を行う目的・対象者を明確にする

研修を成功させるには、「なぜ研修を行うのか」「誰を対象とするのか」を明確にすることが重要です。目的がはっきりしていれば、研修で取り扱うべきテーマや重点を置くポイントも定まりやすくなります。また、対象者の職種や立場に応じて内容を調整することで、実効性も高められるでしょう。

 

内容と方法を決め、研修を実施する

続いて、研修の具体的な内容と実施方法を決定します。取り上げるテーマは、SNSの基礎知識から炎上事例の分析、ガイドラインの理解まで多岐にわたるため、目的に沿って精査が必要です。社内に十分なノウハウがない場合は、専門性の高い内容を外部講師に依頼する方法も有効です。

また拠点が複数ある企業では、オンラインやeラーニングの導入によって場所に縛られずに研修を進められます。受講者の業務環境やスケジュールを踏まえて、自社に適した形式で研修を実施しましょう。

 

従業員へテストなどで理解度調査を行う

SNS研修では、受講者が学んだ内容を「自分ごと」として捉え、実践につなげることが重要です。そのため、研修後にはアンケートや確認テストなどを実施し、受講者の理解度を可視化することが推奨されます。

結果を集計・分析すれば、理解が不十分な項目や伝わりにくかった部分が明らかになり、今後の研修改善にも役立ちます。また、受講者からの自由記述によるフィードバックを収集すれば、研修内容の見直しや資料の更新に活用でき、研修の継続性と質の向上につながるでしょう。

 

まとめ

SNS研修は、従業員一人ひとりの意識改革と企業全体のリスク管理体制強化につながる重要な施策です。SNS研修と一口にいっても炎上の仕組みや具体的な事例、リスクの高いテーマなど扱うべき内容は多岐にわたります。本記事を参考に、自社に適したSNS研修を実施しましょう。