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企業の謝罪戦略(1)~謝罪すべき対象を理解し、適切な場所で謝罪する~

2025年06月10日

読了時間目安: 4分


企業の謝罪は単なる形式ではなく、その本質を理解し、誠実に対応することで初めて価値あるものとなります。信頼を回復するための適切な謝罪の手法について解説します。

問題を正しく認識する

企業が不適切な事案を起こしたとき、問題の本質を正しく理解し、それを世間の認識と一致させない限り、問題は拡大します。リスクを過小評価してしまったために、言葉選びや態度を含めた対応を誤り、批判を受けることは少なくありません。

ここで重要なのは、「誰に対してどのような迷惑をかけたのか」を正しく認識し、企業として真摯に謝罪する姿勢を示し、適切な再発防止策を明確に提示することです。謝罪は単に謝ればいいというわけではありません。謝罪の言葉とともに、以下の内容を伝えなければなりません。

原因解明: 何が原因でトラブルが起こったのかを徹底的に調査すること。

対応状況: 被害の拡大を防ぐためにどのような対応をしているのかを具体的に示すこと。

再発防止策: 同様のトラブルが再び起きないように何を行うのかを明確にすること。

トラブルの発生を完全になくすことは不可能です。しかし、誠実に対応する企業ほど立ち直りが早く、再発がなければ時間とともに問題も風化していきます。過去の教訓を生かし、二度と同じことを繰り返さない。その決意を謝罪の言葉とともに明確に言語化し、文章化することが重要です。

 

広がる謝罪の対象

謝罪において最も重要なのは「被害者」に対する謝罪です。これは企業の過失や失敗によって被害を受けた方々に対して行うべき当然の行動です。企業として謝罪を行い、被害に対する適切な対応を行って納得してもらうことは大前提です。

被害者への謝罪のみで十分とされていた時代もありましたが、現代においては、マスコミ報道やSNSの発展により、謝罪の対象は被害者に限らず、広い範囲に行うことが求められるようになりました。直接被害を受けていない顧客や株主などのステークホルダーはもちろん、未来の顧客候補、更にはニュースや投稿を見て「不快に思った方々」にまで配慮が必要な時代となりました。

謝罪文を書く際には、この拡大した謝罪対象を念頭に置くことが必要です。謝罪の方法や表現は、謝罪の対象が広がったことを意識することで自然に変わっていきます。

例えば、謝罪のリリースの冒頭で「お客様各位」とするケースを目にすることがありますが、これも適切な方法や表現ではないことがわかります。謝罪リリースは、メディアを通じて広く社会に情報を公開し、更なる被害を防ぐためのものです。この認識に基づけば、リリース文の書き方も変化します。最初に迷惑をかけたのは「製品やサービスを利用しているお客様」かもしれませんが、広く世間に対する謝罪と情報公開が必要になります。

 

謝罪の場の選び方

謝罪の対象が決まれば、謝罪をする「場所」も自ずと決まってきます。謝罪は単なる言葉の表現だけではなく、どの媒体を使って行うかも重要な要素です。

企業が不適切な事案を起こした際、商品ブランドのSNSだけで謝罪文を掲載するケースがありますが、これはお勧めできません。ブランドのSNSアカウントはそのブランドに興味を持つ限られた人々にしか情報が届かないため、謝罪の伝達範囲が非常に限定的になってしまいます。結果的に「形だけの謝罪」と捉えられ、更なる炎上を引き起こすケースも見られます。

広範囲に情報を届けるためには、企業の公式ホームページを活用することをお勧めします。ホームページは多くの人々にアクセス可能なプラットフォームで、誠実な姿勢を示すために適切な場です。また、メディアリリースも謝罪の場として重要な役割を果たします。リリースを通じて報道機関に情報を提供することで、透明性が高まり、さらなる被害と批判の拡大を防ぐことができます。

被害者だけでなく広くステークホルダーに誠意を伝えることを忘れずに、信頼を再構築するための場所選びにも細心の注意を払いましょう。