sns 炎上対策

対応困難なクレームにも冷静さを|SNS 炎上を防ぐための視点と準備

2025年12月10日


カスタマーハラスメントやSNS拡散による炎上は、企業にとって深刻なリスクになります。本コラムでは、理不尽なクレームの特徴と対処法、炎上を防ぐ広報戦略をわかりやすく紹介します。

クレームを「炎上」に変えるSNSの匿名性と拡散力

従来のクレームは、企業と顧客との間で完結する一対一の関係でしたが、SNSの普及により、その構図は大きく変化しました。
SNSの匿名性と高い拡散力によって、「本来は直接企業に向かう」はずだった消費者の不満が、瞬く間に不特定多数の人々の目に触れるようになったのです。これまでの企業と顧客という一対一の関係を超えて、「不特定多数を巻き込む」集団的な非難へと変化したものが、「SNSの炎上」になります。

クレーム内容の具体例としては、従来の商品・サービス不備に留まらず、CMの内容や表現、店員の態度、公式アカウントの発言など広範囲に及びます。
もし企業が「理不尽」だと思うクレームの内容だとしても、SNS上でそのクレームへの共感が多数派を占める状況になれば、対処法を誤るとさらなる炎上を引き起こしてしまうことも少なくありません。

制御不能なクレームによる炎上発生と対処法

SNS上で世論を味方につけた理不尽なクレームが発生した場合、それを完全に鎮火させる「唯一の正解」は存在しないのが現状です。
このような制御不能なクレームへの対処法は、「炎上してから火を消す」ことよりも、「発生させないための予防措置」を徹底すること 、そして万が一発生した際には、「被害を最小限に抑える初動対応」を行うことが、最も重要となります。

 

ネット炎上は、いかに迅速な初動対応に取り組めるかで、その後の被害が大きく変わります。まずは、冷静かつスピード感を持って以下の初動対応フローを実施しましょう。
▼炎上発生時に取るべき、3つの初動対応フロー

1. 事実関係の迅速な確認と証拠保全

・何が、いつ、どこで、誰によって投稿されたかを特定し、画面キャプチャや投稿のURLなどをデジタルデータとして証拠を保全する。
・炎上の原因調査と、対処の分析を同時に行う。

2. 関連部門への緊急連携

・現場だけで判断・対応せず、法的なリスクと広報上のリスクを各部門と共有する。

3. 情報発信の準備(迅速性と透明性)

・社内での対応方針が確定次第、「現在、事実確認中」といった状況を伝える一次情報を、迅速に公式アカウント等から発信し、沈黙期間をなくす。

炎上時に企業擁護派を多数派にする戦略

もし企業の考え方とユーザーの考え方に差がある場合、それが炎上を拡大させます。このギャップを埋め、理不尽なクレームを乗り切るための対処法は「企業の考えに擁護派が多数を占める状況」を作り出すことです。

SNS上で理不尽なクレームに関しての議論が活発になると、「企業擁護派」の声も出てくることも多く、ネット世論は均衡状態になるか、擁護派優勢となるケースがあります。

擁護派を増やすために必要なのは、「常に誠実で、誤解を生まない企業イメージ」を平時から見せることです。企業の理念や対応基準が普段から明確であればあるほど、緊急時に第三者(世論)が「この企業が理不尽な攻撃を受けている」と判断しやすくなり、自然と擁護派を増やすことにつながります。

「昔は大丈夫だった」が通用しない現代のルール

近年のコンプライアンス研修において、特に中堅層の方々へ「特に気を付けてください」という注意喚起が頻繁に行われています。これは、社会の価値観が変化し、ビジネスのルールが根本的に変わったためです。
「一昔前までは許容されていた」という認識や、「ちょっとくらい平気」という軽率な判断は、現代では通用しません。

企業が炎上を防ぐには、SNS上で自社と異なる意見が多数を占めた場合、「これまでの自社の考え方が、世間から見たら非常識になっているのではないか」という危機感を持って対処する姿勢が不可欠です。


特に、以下のテーマに関する言動や表現は、即座に世論を味方につけたクレームへと発展し、SNS炎上を招くリスクが高い傾向にあります。

炎上の火種となる「異なる考え方」の領域

  • ▶多様性・人権:人種、性別、思想信条、性的指向に関する不適切な表現
  • ▶社会貢献性:環境問題(サステナビリティ)や、地域社会への配慮が欠けていると見なされる行為
  • ▶公序良俗:芸能、芸術、スポーツといった公共性の高い分野に関する安易なパロディや発言

企業として取るべき「最大の予防策」と行動指針

企業として取るべき行動は、テクニックやツールに頼る前に、まずSNSという公共の場での心構えを全社員で共有し徹底することです。

SNSの有効活用について、ある企業様にお伺いしたユニークな心構えをご紹介します。
ある大手製菓メーカーのSNS責任者の方は、「公園理論」を徹底しているそうです。
「公園理論」とは、SNSという公共の場(公園)に「いさせていただく」という意識を徹底し、振る舞いを考える心構えになります。

この「SNSは公共の場」という意識を持つと、「何をすべきか」「何がダメなのか」の行動基準を共通認識することができ、制御不能なクレーム炎上への最大の予防策になるでしょう。

心構えを行動基準に:組織として次のステップへ

しかし、心構えだけでは、現代のソーシャルリスク管理は万全とは言えません。
以下の炎上を未然に防ぐ体制構築を実施することも、企業ブランドを守る重要な防壁となるでしょう。

  • ・社員への教育:共通認識や行動指標を浸透させるためのマニュアル・研修
  • ・基準の明確化:具体的な投稿内容や確認体制などの明確なガイドライン
  • ・監視体制:炎上の火種を早期検知するためのモニタリング体制の構築

 

企業が抱えるSNSリスクは、業種や事業規模によって異なります。
より具体的な運用ガイドラインや初動対応の体制など、組織のリスク対策を強化したい方は、ぜひ専門家にご相談ください。

 

この記事は、SNSリスクモニタリングサービスなどリスク対策サービスを25年以上支援しているリリーフサイン数多くの企業広報・危機管理対応の経験を持つ企業広報コンサルタントが執筆しています。

ぜひお気軽にご相談ください