AI×SNSで急増する「なりすまし」脅威|企業ができる唯一の対策
2025年12月26日
手法は古いが中身は別物|AIとSNSで進化した「なりすまし」
「なりすまし」という犯罪手法自体は、決して新しいものではありません。古くからある典型例として、「消防署の方から来ました」と名乗って消火器を法外な値段で売りつける詐欺が挙げられます。
この手口の本質は、公務員や有名人、あるいは大企業といった第三者が持つ「社会的信頼」や「知名度」を悪用し、ターゲットの警戒心を解く点にあります。 「権威ある名前」を借りて相手を騙すという心理的なアプローチは、昔も今も変わらない詐欺の王道です。
「トクリュウとAI翻訳」が変えた犯罪システム
昨今、SNSとAIの発展により、なりすましを含む犯罪行為は「大規模かつ広範囲」に拡大し、深刻な社会問題となっています。
その中心にあるのが、SNSで闇バイトなどの実行役を募り、離合集散を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ(通称:匿流・トクリュウ)」の存在です 。
「ルフィ広域強盗事件」に見られるように、SNSを通じて集められた実行犯が組織的に動く手口は多様化の一途をたどっています。事態を重く見た警察庁も、本年10月1日に都道府県の警察の枠を超え全国の警察と新たな連携体制を発足させるなど、国を挙げた対策が急がれています。
AI翻訳が破壊した「日本語の壁」|海外詐欺グループの参入
さらに脅威を加速させているのが、生成AIの進化です。
かつて日本語は、その言語的な特殊性から、海外の詐欺グループにとって参入が難しい「天然の防壁」として機能してきました。
しかし、AIによる翻訳精度が飛躍的に向上し、非常にスムーズな日本語生成が可能になったことで、この「参入障壁」は事実上、消滅してしまいました。
今や、画面の向こうにいるのが日本人か外国人かを見分けることは困難であり、国境を越えたなりすまし攻撃が容易に行われる時代に突入しています。
企業がとるべき「なりすまし」への現実的な対策
こうしたなりすまし被害は、企業が突然巻き込まれてしまうSNSリスクになりますが、残念ながら実効性のある対策が非常に限られています。
なぜなら「企業知名度を悪用したなりすまし」において、直接的な被害を受けるのはあくまで「被害にあった個人」であり、企業ではないためです。もちろん、企業側もブランド毀損や業務妨害などの被害を受ける当事者ですが、「偽計業務妨害」など法的な立証はハードルが高いという側面があります。
2024年5月には、通称「プロバイダ責任制限法」と言われる「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律」が施行されました。しかし、個人情報保護の観点や、自由な言論空間への規制に対する反発もあり、企業が即座に犯人を特定し対応することは、難しい状況に変わりありません。
ですが、ただ静観するだけではいけません。なりすまし行為への最大の対抗策は、顧客(および顧客候補)に対して「被害に遭わないための情報発信」を愚直に続けることです。
以下のような、具体的な対応策が必要になります。
- ・継続的な注意喚起:一度ではなく、定期的にアナウンスを行う
- ・手口の公開:「犯罪の具体的な手口」や「偽サイトの特徴」など得た情報を速やかに開示
このような対応が、企業として「顧客を守る姿勢」を示すことになり、ユーザーのリテラシー向上を促します。また結果として、なりすまし行為による被害を最小限に食い止めることにもつながるでしょう。
まとめ|信頼を守るために、今企業ができること
巧妙化するなりすましをきっかけとした犯罪手口や、SNSリテラシー不足の課題に対して、抜本的な解決を図ることは困難ですが、対策方法が何もないわけではありません。
日々変化する、デジタル社会の脅威に屈することなく、企業として正しい情報を発信し続けることで、会社やブランドの信頼と大切な顧客であるユーザーを守ることができるでしょう。
この記事は、SNSリスクモニタリングサービスなどリスク対策サービスを25年以上支援しているリリーフサインで、数多くの企業広報・危機管理対応の経験を持つ、企業広報コンサルタントが執筆しています。
ぜひお気軽にご相談ください。
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