sns 炎上対策

「噂は放置」が一番危険|社名誤認による被害を沈静化させる広報戦略

2025年12月19日


自社に過失がないにも関わらず巻き込まれる「とばっちり炎上」。デマや誤認による被害を防ぎ、さらにメディアを味方につけて世論の支持を得るには、どのような広報対応が必要なのでしょうか。本記事では、SNS時代の風評被害対策と、ピンチを切り抜けるプロの広報術を解説します。

突然降りかかる「とばっちり炎上」の事例とパターン

企業の知名度やコンプライアンス体制に関係なく、ある日突然、SNS上のトレンドやニュース報道をきっかけに「とばっちり炎上」を受けるケースが増えています。

一般的な炎上は、来店客による迷惑行為(不適切投稿など)を発端に、企業の対応の是非がSNS上で議論され、非難が殺到するパターンが多く見られます。
一方で、より予測が難しく、深刻な影響を及ぼすのが、企業とは無関係な理由による「誤認型の風評被害」です。代表的なのが、社名や名称が似ているという理由だけで、無関係の企業や団体が攻撃対象となってしまうケースです。

実際に起きた誤認による被害事例

・校名と部活動の誤認(日体大の事例)
日本大学アメリカンフットボール部の不祥事が報道された際、名称が似ている「日本体育大学(日体大)」に批判が波及しました。さらに、アメフト部ではなく「ラグビー部」にまでクレームが殺到するなど、二重の誤認被害が発生しました。

・社会情勢による風評(株式会社コロナの事例)
新型コロナウイルスの感染拡大時、「株式会社コロナ」はウイルス名と同一であるという理由だけで、ネガティブなイメージを伴う風評被害を受けました。

このような理不尽とも言える「連想ゲーム」も、現代の企業経営における現実的なリスクのひとつとなっています。

なぜ「誤認」は起きるのか?報道とSNSの拡散構造

なぜ、明らかに別会社・別団体であるにも関わらず、このような誤認が起きてしまうのでしょうか。その背景には、報道とSNSが組み合わさることで生じる、情報拡散の構造的な問題があります。

新聞やネットニュースでは、見出しの文字数制限の影響から、企業名や団体名が略称で表記されることが少なくありません。そのため日大アメフト部の事例でも、「日本大学」ではなく「日大」と表記されるケースが大半でした。

SNS上で情報が広まる過程で、このわずかな省略が誤変換や見間違いを引き起こし、ユーザーの誤認を生むきっかけとなります。さらに、この単純な見間違いを「企業の脅威」に変えてしまうのが、SNS特有の拡散メカニズムです。

SNS上には、不祥事を起こしたとされる企業を糾弾しようとする、強い正義感を持つユーザーが一定数存在します。彼らの正義感は、情報の正確性を十分確認する前に、投稿を拡散する傾向があります。 その結果、誤った情報を含む投稿が「重大な不祥事だ」という感情と共に一気に広がり、気づいたときには無関係な企業への抗議や攻撃へと発展し、企業にとって突然の脅威となります。
これこそが、論理が通用しないまま事態が拡大する、SNS拡散の本質的な怖さと言えるでしょう。

「噂は放置すれば消える」が致命傷になる理由

SNSの拡散力における最大の脅威は、単なる伝達スピードではありません。それ以上に深刻なのが、情報の「質」が短時間で変質してしまう点です。

このような環境下で、企業が最も避けるべき対応は「身に覚えがないから」と静観してしまうことです。デマや風評被害を放置すればするほど、SNS上ではそれを「事実」と信じる人が増えていきます。かつてのように「噂は放っておけば消える」という考え方は、もはや通用しません。

現代においての沈黙は「反論できない=事実である」と誤って受け取られてしまい、炎上を助長する要因となるリスクになります。だからこそ「とばっちり」を受けた初期段階での、迅速かつ的確な対応が不可欠なのです。

企業として取るべき広報戦略:SNSの声を「支持」に変える逆転術

誤認による炎上に直面した際に、企業が最優先すべき対応はSNS上で誤った「事実認定」が定着するのを防ぐことです。他の危機管理事案と同様、ここでも重要なのは「初動」になります。

「身に覚えがないから」と静観せずに、速やかに状況を把握し公式サイトやSNSアカウントを通じて「当社は無関係である」という事実を、冷静かつ毅然とした姿勢で発信しましょう。

加えて効果的な手段となるのが、メディアを味方につける(メディアリレーションズ)の活用です。
懇意にしているメディアや記者に対し、「無関係のデマにより業務に支障が出ている」という現状を説明し、取材・記事化してもらうのです。 自社発信だけでなく、第三者であるメディアが「被害者としての企業」を報じることで、情報の信頼性は格段に高まります。
実際に、前述の日体大の事例でも「大学側が困惑している」という報道がなされたことで、事態の沈静化が大きく進みました。

「こんなデマで企業が困っている」という事実が伝わると、SNSユーザーの感情は怒りから同情へと変化します。そして、「これは酷い」「間違えないであげて」といった声が広がることで、企業は強力な世論の支持を得ることができるのです。この支持の声こそが、誤認による炎上を最も効果的に打ち消す力となります。

まとめ:沈黙はリスク。デマに負けない強い広報体制を

「身に覚えがないからこそ、声を上げなければ伝わらない」。
これが、SNS時代における最大の教訓です。
デジタルタトゥーが残る現代において、「噂は放っておけば消える」という考えは通用しません。

とばっちりを受けた際、嵐が過ぎ去るのをただ待つのではなく、迅速な情報開示とメディア連携し、正しい認識を世間に広げることが、ブランドを守る唯一の手段となります。
万が一の事態に備えて、平時から広報体制を作り、メディアとの関係構築を進めておくことで、予期せぬ風評被害から企業を守る、最も確実な備えと言えるでしょう。

 

この記事は、SNSリスクモニタリングサービスなどリスク対策サービスを25年以上支援しているリリーフサイン数多くの企業広報・危機管理対応の経験を持つ企業広報コンサルタントが執筆しています。

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