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誹謗中傷が企業に与えるリスクと対策について

2023年07月31日

読了時間目安: 6分


インターネット上で企業の評判を揺るがす誹謗中傷が日常的に行われている現代。誹謗中傷は、まさにネット上の面罵とも言えます。現実世界では面を合わせて罵られるのでまだ分かり合えることもあるのですが、ネット上だとそうはいきません。ネット上での誹謗中傷は企業のブランドやビジネスに大きな影響を及ぼします。時にはその存続さえも危ぶむ事態を生み出す可能性もあり、誹謗中傷対策は、企業にとって経営戦略の一部とも言えます。本記事では、ネット上で企業が誹謗中傷に晒されるリスクと、それに対する適切な対策について詳しく掘り下げていきます。

ネット上での誹謗中傷が及ぼす企業への影響

インターネットの普及は多くの利点をもたらしましたが、その反面、企業への誹謗中傷の拡散が容易になるという問題も生じています。その影響は様々で、以下のような点が挙げられます。

ブランドイメージの損傷

誹謗中傷が広まると、企業のブランドイメージは大きく損なわれます。イメージ回復には時間と費用がかかるため、この影響は深刻です。

売上減少

ネガティブな口コミは消費者の購買意欲を落とし、結果的に売上に影響を与える可能性があります。特に、ネットで商品調査を行う消費者が増えている現在、この影響は無視できません。

採用活動への影響

企業の評判が悪化すると、求職者の間で敬遠され、採用活動が難航する可能性があります。優秀な人材の獲得が阻害されることは、企業の長期的な発展に影響を及ぼします。

投資家の信頼損失

誹謗中傷が拡散されると、投資家からの信頼を失う恐れもあります。その結果、資金調達が困難になるという直接的な財務上の影響を受ける可能性があります。これらの影響を踏まえると、企業が誹謗中傷に対して適切な対策を講じることの重要性は明らかです。

ネット上の誹謗中傷に対する具体的な対策

誹謗中傷と対峙する企業にとって、その問題に取り組むための具体的な対策が求められます。以下に、可能な対策をいくつか紹介します。

オンラインレピュテーションマネジメント (ORM)

ORMは、インターネット上で企業に対する肯定的な評価を増やし、ネガティブな評価を管理する一連のプロセスを指します。具体的には、顧客からのレビューやフィードバックに対する迅速かつ適切な対応、SEOを活用した肯定的なコンテンツの強化などが含まれます。

法的対策

誹謗中傷は違法行為であるため、法的手段を用いることも一つの対策です。しかし、法的手段は証拠の確保や手続きに時間と費用がかかるため、全ての事例で適切な対策とは限らない点に注意が必要です。

ソーシャルメディアの監視と対応

ソーシャルメディアでの誹謗中傷に対しては、企業自体がアクティブになることが求められます。誹謗中傷の初期発見と早期対応により、その拡散を防ぐことが可能です。

誹謗中傷への教育と予防

企業の従業員自身が誹謗中傷の発生源となることを防ぐために、誹謗中傷や社内外での適切なコミュニケーションについての教育も重要です。これらの対策は、誹謗中傷の影響を最小限に抑え、企業の評判を保護するための重要なステップです。しかし、それぞれの対策にはそれぞれの課題と限界があります。

誹謗中傷対策の限界と課題

誹謗中傷への対策は企業にとって必須ですが、それらの対策には限界と課題が存在します。以下に、その主な点を挙げてみます。

証拠の確保と特定

誹謗中傷の投稿者を特定し、適切な法的手段を講じるためには、証拠の確保が必要です。しかし、匿名性が高いインターネット上では、投稿者の特定や証拠の収集は困難であり、時間と費用がかかる場合が多いです。

誹謗中傷の速度と広がり

インターネット上での情報の拡散速度は非常に速く、誹謗中傷が一度拡散されると、それを完全に取り消すのは困難です。これは、特にソーシャルメディアを通じた誹謗中傷に対する対策の限界となります。

投稿内容の判断

どのような発言が誹謗中傷に当たるかの判断は、時には難しい問題となります。消費者の不満や批判は、企業にとって価値あるフィードバックであり、それらを誹謗中傷と一概に判断し、排除することは、公正な評価システムを阻害する恐れもあります。

従業員の教育と監督

従業員の誹謗中傷に対する教育は重要ですが、全ての従業員が常に適切な対応をするとは限らないため、監督と指導が必要です。また、教育プログラムの設計と実施は、リソースと労力を必要とします。これらの課題は誹謗中傷対策の難しさを示していますが、企業としてはこれらの課題を理解し、最善の対策を講じることが求められます。

日本の企業が直面している誹謗中傷対策の状況

インターネット上の誹謗中傷に対する対策は、国や地域によって大きく異なります。日本の企業が直面している誹謗中傷対策の状況を詳しく見ていきましょう。

法的手段の活用

日本では、誹謗中傷に対する法的対策が一部の企業で活用されています。しかし、投稿者の特定や証拠収集の困難さから、全ての誹謗中傷に対して法的手段を用いることは難しいという課題があります。

企業の対策策定状況

 一部の大企業では誹謗中傷対策のためのガイドラインや教育が実施されていますが、中小企業ではまだ十分な対策がとられていないケースが多いです。特に、予算や人員の制約から、適切な対策が取られていない場合があります。

インターネットホットラインセンターの活用

日本では、インターネットホットラインセンターが不適切な情報の通報や削除要請を行っています。これは企業にとって有用なサービスですが、誹謗中傷の定義や削除基準など、一部問題点も指摘されています。

情報漏洩のリスク管理

企業にとって、誹謗中傷だけでなく情報漏洩も大きなリスクとなります。従業員の教育や内部統制の強化により、これらのリスクを管理することが求められます。これらの状況から、日本の企業における誹謗中傷対策は、法的手段や教育、内部統制などの複数のアプローチが必要であり、それぞれの企業が自身の状況に合った対策を講じることが求められます。

社会全体での取り組みと法制度の役割

企業の自主的な対策は必要ですが、それだけでなく、社会全体での取り組みや法制度の役割も重要な要素となります。特に、インターネット誹謗中傷問題は個々の人々のモラルや倫理観が深く関わるため、教育や啓発活動が求められます。さらには、企業が被害を受けた場合の対応策として法制度の充実が必要となります。まず、教育と啓発活動については、子供や若者から大人まで、あらゆる世代でのデジタルリテラシーの向上が必要です。インターネットを通じたコミュニケーションが増える現代社会において、誹謗中傷行為の社会的影響や個々の人々に及ぼす深刻なダメージを理解することは不可欠です。次に、法制度の役割ですが、誹謗中傷による被害を防ぐため、適切な法的対応が重要です。具体的には、企業が被害を受けた場合に、効果的に対応できるように法的枠組みを整備することが求められます。しかし、法制度の整備だけではなく、適用の現場での具体的な運用方法や対応策の構築も必要となります。これらの取り組みを進めることによって、企業だけでなく、社会全体がインターネット誹謗中傷問題に立ち向かうことが可能となります。

今後の展望

インターネットの普及により、企業への誹謗中傷はこれまで以上に深刻な問題となっています。しかし、前述した対策や社会全体での取り組み、法制度の整備を進めることにより、この問題に対処する道筋は見えてきています。先ず、企業自身が誹謗中傷に対するリスク管理体制を強化し、社内教育を行うことで自社のイメージを守り、顧客との信頼関係を維持する努力が続けられることでしょう。また、社会全体での教育と啓発活動は、個々の人々のデジタルリテラシー向上と共に、誹謗中傷の社会的な影響を理解することを促すでしょう。これにより、誹謗中傷行為自体が減少する可能性があります。しかし、これらの取り組みは時間と労力を必要とします。そして、インターネットの技術や利用状況の変化に対応し続ける柔軟性も必要となります。企業だけでなく、社会全体がこの課題に対して協力し、取り組んでいくことが求められます。

まとめ

ネット上での誹謗中傷は、企業の評判を大きく損なうリスクをはらんでおり、対策の重要性が高まっています。この問題に対処するためには、企業自身のリスク管理と対策、社会全体の教育・啓発活動、そして適切な法制度の整備と活用が必要です。企業は、誹謗中傷に対するリスク管理を強化し、社内教育を行うことで自社のイメージを守り、顧客との信頼関係を維持しようとする動きが見られます。社会全体での教育・啓発活動により、デジタルリテラシーの向上と誹謗中傷の社会的影響の理解が進むことで、誹謗中傷行為そのものが減少する可能性も見据えられます。また、法制度の整備とその適用方法の検討が進むことで、企業が被害を受けた場合の法的対応がスムーズになることが期待されています。これらの取り組みは企業単独ではなく、社会全体での協力が必要であり、時間と労力を必要としますが、その努力を通じて企業と社会全体が誹謗中傷問題を乗り越えていく道筋が見えてくるはずです。